【VR】Oculus Quest は今までの VR デバイスと比べてどうなのか?

Oculus Quest Box

予約していた Oculus Quest がとうとう5月24日に到着しました。予約時に表示されていた配送予定日ピッタリ配送でした。

同じくケーブルレス・スタンドアロン型である Oculus Go と比べてどうなのか、また PC VR 最高峰の HTC Vive Pro と比べてどうなのか、個人的な感想を記録しておきます。

Oculus Quest の箱を開封

箱を開けるとこのような様子で入っています。

Oculus Quest Inside Box

ヘッドセットの固定バンドは、Oculus Go のへにゃへにゃしたゴムとは違い、ある程度形を維持できるプラスチック(?)のような材質でできています。固すぎることもなく、ヘッドセットを軸に上下に回転するようになっており、装着時にはバンドを上に回転させて、頭にはめて、下ろすという動作になり、Oculus Go よりもスムーズに装着できるよう感じます。

Oculus Quest

また、Oculus Go に比べると付属の充電用ケーブルがとても長く、3メートルぐらいあります。

これは個人的にはとてもありがたいです。なぜなら Oculus Go では、使おうと思ったらバッテリー残量が無かったという時や、使用途中でバッテリーが足りなくなった時など、ケーブルをつなげて充電しながら使おうとしても、付属の充電ケーブルが短かったためかなり限られた体勢・位置を取る必要がありました。でも Oculus Quest なら、充電しながら利用するのも十分に可能そうです。(せっかくのケーブルレスVRというメリットは消えてしまいますが)

また細かい点ですが、Oculus Quest ではコントローラの電池カバーの開け閉めが改善されており簡単にできます。Oculus Go では結構手こずったのですが、Quest のコントローラーではカバーを外すのも、カバーを付けるのも、マグネットの力で簡単にカパッとできます。

セットアップ

セットアップは簡単でした。

  1. スマホで Oculus アプリを用意
  2. アプリ上で「新しいヘッドセットとのペアリング」を選び、ヘッドセットの画面右下に表示されている5桁の数字を入れる
  3. Wifi アクセスポイントの設定

あとは最新のアップデートが自動でダウンロードされた後、チュートリアルが始まりました。

スペック比較

使った感想の前に、まずスペックをおさらいしてみたいと思います。

Oculus Go Oculus Quest HTC Vive Pro
ディスプレイ 液晶パネル 有機ELパネル 有機ELパネル
解像度(片目) 1280×1440 1600×1440 1440×1600
リフレッシュ
レート
72Hz 72Hz 90Hz
視野角 110度 不明 (100度?) 110度
IPD 調整機能 なし 調整可能 調整可能
サウンド スピーカー内蔵 スピーカー内蔵 ヘッドホン付属
重量 468g 571g 765g
トラッキング 3DoF 6DoF 6DoF
トラッキングに
必要となる機器
なし
(内蔵ジャイロ)
なし
(内蔵ジャイロ・カメラ)
ベースステーション
設置必須
ケーブル接続 ケーブルレス ケーブルレス PCにケーブル接続
値段 23,800円 49,800円 143,640円

スペック的に優れている点を赤文字で示しています。パッと見て分かるとおり、Oculus Quest はバランスが取れて優れています。

特にディスプレイ性能に関しては Oculus Quest のスペックはかなり優秀です。現時点 PC VR 最高峰の HTC Vive Pro と比べてもほぼ同じスペックです。

他の点でも、ベースステーションなどの外部機器を設置せずに 6DoF (Degree of Freedom) で動作をトラッキングでき、またヘッドセットにケーブルを接続せずに単体で使えるというのも魅力です。

注意: これら3つのデバイス間では、実際の使用用途・対応アプリケーションは異なりますので、スペック値だけを比較して購入決定するのはあまり意味がありません。

IPD 調整機能

個人的には Oculus Quest の購入を決めた特に大きな理由が IPD の調整が可能だという点でした。実際、最初のセットアップの途中で焦点を調整するために IPD スライダーを調整する場面が出てきます。

IPD (Inter Pupillary Distance) とは瞳孔間距離のことです。

瞳孔間距離は人それぞれ違いがあり、大まかには以下のような正規分布になっているそうです。

Inter Pupillary Distance Distribution

もちろん男性と女性でも異なっており、Wikipedia によると以下のような平均・標準偏差・パーセンタイルとなっているそうです。(IPD values (mm) from 2012 Army Survey)

性別 被験者数 平均 標準偏差 最小値 最大値 1% 5% 50% 95% 99%
女性 1986 61.7 3.6 51.0 74.5 53.5 55.5 62.0 67.5 70.5
男性 4082 64.0 3.4 53.0 77.0 56.0 58.5 64.0 70.0 72.5

これらの分布を踏まえて、Oculus Go や Oculus Rift S は IPD=63.5 (mm) あたりをターゲットに固定して設計されていると思われます。

さて、皆様の IPD はどれぐらいでしょうか?

ちなみに、正確に測るためには、定規に左目の中心を合わせるときは左目で、右目の位置を合わせるときは右目で見る必要があります。正確に測るための方法は How to Measure Your IPD に書かれています。

自分の場合、昨年 HTC Vive Pro のセットアップの途中で IPD を測定するステップがあったので、その時に測りました。

実は測定の結果、自分の IPD は一般の平均値よりかなり大きく乖離していることが分かったのです。(平均値よりも 標準偏差×2 以上、偏差値で言うと 70 を超えるぐらい平均から外れている)

それが分かってからようやく納得できました。というのも、Oculus Go は IPD が調整不可で、おそらく平均値 IPD = 63~64 mm ぐらいで設計・固定されているため、自分にはどうも合っていなかったようなのです。そのため画像がぼやけたり二重に見えたりといった症状にずっと悩まされていたのです。

IPD の差が数ミリ程度なら脳がなんとか調整してくれるらしいのですが、自分の場合はそれを遙かに超えてズレてしまっているので、焦点がなかなか合わず、ぼやけたり、手前の物が二重に見えたり、VR 酔いがひどくなったり、頭痛がしたりといった症状が強く出てしまっていたようなのです。

HTC Vive Pro は IPD 調整機能があったので、Oculus Go に比べて大分改善されました。同様に Oculus Quest でもIPD 調整スライダーが付いており、それを動かすと明らかに左右レンズの位置間隔が動くのが分かります。最適な位置を探すのはなかなか大変かもしれませんが、それにより目の疲れ・鮮明感・ぼやけ方が大きく変わるので、調整する機能があるのは大変助かります。

装着感

前述したとおり、バンドがある程度形状を保ってくれるので、装着するのは Oculus Go よりラクなような感じがします。とは言っても、全体的なバランス・デザインは Oculus Go と似ているので、やはり後頭部のバンドに比べて前面部が重く、顔の前面に重量がかかってくるので、使用後に顔の頬に跡が付くというのは避けられないようです。

また、Beat Sabre などの体の動きが激しいゲームをしていると、ヘッドセットの位置が微妙にずれてくるような気がしました。

こういった装着感に関しては、高いだけあって HTC Vive Pro の方が優れています。顔の前面部だけでなく、側面・背面からもガッシリ支えてくれる構造になっているので、長時間利用しても接触部の痛みや跡も付きづらいです

でももしかしたら、自分が Oculus Quest のバンドの調整に慣れておらず下手なだけかもしれません。Oculus Quest の装着感はバンドの調整次第で大きく変わるので、もう少し微調整してみたいと思います。

コントローラ

Oculus Quest のコントローラはこのような形をしています。

Oculus Quest Controller

このような形のコントローラは初めて使ったのですが、Vive のコントローラに比べて「つかむ」という動作が自然にできるような気がします。

チュートリアルの途中で、卓球のボールとラケットをつかんで打ってみるとか、紙飛行機をつかんで飛ばしてみるとかが出てくるのですが、想像以上に自然に操作できました。

プレイした感想

操作を学ぶためにチュートリアルの途中にプレイできるミニゲームに加え、いくつかの商品のデモ(体験版)がプリインストールされています。

体験版は、どれも最初ちょこっとしか遊べませんが、さすがに選ばれたローンチタイトルだけあって、Oculus Quest の 6DoF トラッキングやコントローラ入力をうまく使っているように感じます。それらの動き・操作性は Oculus Go では不可能だったもので、それらが加わることで VR ゲームの可能性が大きく広がっています。

もちろんこれらは Vive Pro や Oculus Rift といった PC VR では可能だったわけですが、PC VR 環境はそろえるのが非常に高価なことと、またヘッドセットが常に PC とケーブルでつながっていなければならず、どうしてもケーブルが邪魔になってしまうことが度々ありました。

それらのハードルを解消しているという点では、Oculus Quest には大きな価値があるといえます。

気になる画質は?

Oculus Go よりはキレイだと思いますが、HTC Vive Pro と比べてどうかと言われると、残念ながら大分差があるようです。

例えば同じ Angry Birds VR での比較

Oculus Quest

Vive Pro

例えば発射台に書かれている “WAIT BEHIND THIS LINE” という言葉は、Oculus Quest 版でも認識できますが、Vive Pro だと鮮明に読めます。(画像をクリックして拡大するとよりよく分かります)

また、処理量を軽減させるためか、Oculus Quest 版は画像の中心部に比べ、周辺部の解像度を落として描画しているようです。

ただこれらの違いは、両方のデバイスを交互に付けて詳細に比較してみたから気づいただけであって、それぞれ別々に使っている分にはあまり気づきません。

そもそも10万円以上もするゲーミングPCにポリゴン数やアンチエイリアシングの処理でかなうはずがないわけで、その差を埋めるための工夫は大分されているようです。そして基本的には同じような雰囲気でプレイできてしまうのは驚きです。

ちなみにディスプレイ・レンズ自体の質としては、特別良くも悪くもなく、スペック通りという感じです。つまり、解像度はそれなりに高く細かい鮮明感はありますが、とはいえよく見ればピクセルの形やピクセル感の隙間はどうしても見えてしまうという、現時点のディスプレイスペックでの限界は残っています。それは Vive Pro でも同様です。

その他気になったこと

Oculus Quest 用のアプリの値段が高い?

Oculus Quest 用のゲームを買おうとすると、微妙に値段が高いような印象を受けました。

高いと言っても、990円~2990円ぐらいとかで、コンソールやPCゲームに比べれば安いのですが、数百円程度のアプリが多くある Oculus Go やスマホなどに比べるとどうしても高い感覚(手軽に購入しづらい感覚)を受けてします。

Oculus Go と Oculus Quest はターゲットが違う

Oculus Quest は、スペック的には Oculus Go の完全上位機種にも見えるのですが、今まで Oculus Go 用に Oculus ストアで購入していたアプリは使えません。

最初は Oculus Quest は Oculus Go の上位互換デバイスなのかなと思っていたのですが、そうではなさそうです。というか、目指しているターゲット層が明確に違う気がします。

Oculus Go は VR コンテンツビューワーとしては優秀でしたが、一方、VR ゲームとしてはできることが限られていました。

一方、Oculus Quest はゲーム機の位置づけのようです。つまり、Nintendo Switch などと同列で、ゲームを購入し、VR ゲームをドップリ遊ぶためのデバイスのようです。

そう考えれば、先ほどのゲームの価格の値段帯も納得できます。

Oculus Go 用のアプリも使えるようにして欲しい

現時点では Oculus Quest 用のアプリの数はかなり限られているため、Oculus Go の代わりとはなりえません。なので両方ケースバイケースで使い分ける必要があります。両方置く場所を考えたり、両方とも充電しておくとか面倒くさい・・・。

Oculus Quest 用に開発された、チューニングされた高品質のタイトルのみ提供するという位置づけなのかもしれませんが、別にすべてのアプリが 6DoF トラッキングやコントローラーの機能を利用しなくても、ライトなアプリがあっても良いと思います。

Oculus Rift と Oculus Quest 間でクロスバイ(片方用に買えばもう片方でも遊べる)に対応したゲームが提供されているように、できれば Oculus Go 用のアプリも Oculus Quest で使えるような仕組みを提供して欲しいです。そのようになれば、スペック的には Oculus Go でできていることなら何でも Oculus Quest でもできるはずなので、Oculus Quest は完全上位互換モデルとしてさらに活躍できるはず。

PC 用の VR ゲームをケーブルレスに Oculus Quest でプレイできるよう ALVR で対応してくれたら最高

以前に紹介したように ALVR (Air Light VR) という神ソフトウェアがあります

これを使うと、PC VR (Steam VR) のゲーム画面を Wifi 経由で Oculus Go に転送することで、Oculus Go 上でワイヤレスに遊べてしまうというアプリです。ただ、Oculus Go ではモーショントラッキングやコントローラの仕様の制約上、PC VR の部分的な互換にとどまり、まともにプレイできるゲームは限られていました

しかし、それらのスペック的なギャップは Oculus Quest では解決されているので、もしも ALVR が Oculus Quest に対応すればで、ケーブルレスで PC VR ゲームをフルにプレイできる(6DoF トラッキングかつ左右のコントローラからもフル入力対応でプレイ)というのも夢物語ではないかもしれません。これが実現できればかなりインパクトがあります。

実際、SDK (開発環境)という意味では Oculus Go と大分互換性があるらしく、Oculus Go の開発環境を使えば Oculus Quest のアプリも作れてしまうと言う話です。

作者様、是非検討のほうよろしくお願いいたします。。。

【追記】
ALVR が Oculus Quest に対応しました!

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