【VR】Vive Pro と Oculus Go + ALVR での Skyrim VR 体験の比較

HTC Vive Pro と Oculus Go 両方を使いわけながら Skyrim VR をプレイしてみてしばらく経ちました。

値段の差があまりにも大きく(23,800円 vs 143,640円)、目指す方向性も全く違う製品なので比較するのも意味がないとも思ったのですが、少なくとも自分が Skyrim VRをプレイしている限りは意外といい勝負をしているようにも思えるので、個人的な感想を記録しておきます。

Oculus Go v.s. HTC Vive Pro

前提条件

まずはじめに、Oculus Go はスタンドアロンで使うヘッドセットなので、デフォルトでは PC につないだり Steam VR のゲームをプレイしたりすることはできません。

ですが 以前に紹介した ALVR (Air Light VR) というフリーソフト を使えば、Steam VR のゲームの一部をプレイすることができます。ただし、Oculus Go と ALVR の組み合わせでは以下の制限があるため一部のゲームしか満足にプレイできません。

  • ヘッドセットのトラッキングが 3DoF のみ
  • VR コントローラーが一つのみ、かつボタン数が少ない

前者 3DoF の制限により、ヘッドセットで前後左右移動、またはしゃがむなどの動作が必要となるゲームはプレイできません。また後者コントローラーの制限により、両手でコントローラを持って使うゲームやボタンを複数使用するゲームはプレイできません。

ただ、一部のゲームではこれらの制限はあまり影響がなく、例えば Skyrim VR では視点移動だけヘッドセットの 3DoF トラッキングを使い、その他の入力は XBox コントローラーを使えば全く問題なく最後までプレイできます。

以下の比較は、その条件で Skyrim VR をプレイしてみての感想になります。その他 ALVR でプレイできるゲームはこちらで確認できますが、 やはり制限によりまともにプレイできないケースも多いので、あくまでもご参考までに。(例えば Fallout 4 VR は XBoxコントローラーが使えないのでまともに操作できない)

初期設定:引き分け

Vive Pro (普通のViveも含む) は初期設定が多少面倒で、特にベースステーションの設置で戸惑ってしまう人も多いかと思います。ただ設置場所・方法をあらかじめ考えておき、ゴリラポッドやカメラホルダーなどの便利グッズをあらかじめ用意しておけば、説明は丁寧なのでそんなに苦労せずにセットアップできました。


Vive Base Station

一方 Oculus Go は、単体で使うだけならスマホアプリと連携して簡単にセットアップできます。しかし、ALVR を使う場合は、PC にもヘッドセットにも特別なソフトウェアをインストールする必要があります。

なのでトータルではどちらもそれなりに労力が必要なため、引き分けとします。

装着感:Vive Pro の勝ち

Oculus Go の方は、ヘッドセットをゴムバンドで固定しているだけなので、重みが前面に集中し、特に目の下、頬のあたりにかかってくるように感じます。なので 30分〜1時間程度使用しているとくっきりと顔に跡が残ってしまいます。例えば朝早起きしてプレイしたりすると、朝食時には家族にバレバレですし、下手したら通勤中もしくは会社に着く頃まで顔に跡が残ってしまいます。(皆さんもそうですか?)

一方で、Vive Pro はヘッドセットのカタログスペック上の重量はより重いのですが、ヘッドセットが前面だけでなく側面・後面までがっちりとホールドされるので、重みも分散されるからか、長時間つけていても楽ですし、ズレずに安定しています。また、密着面も柔らかいので顔に跡も残りません。(さすがに髪型は崩れますが)

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グラフィックスのクオリティー:Vive Pro の勝ち

周辺部のぼやけ感

Oculus Go は IPD (焦点間距離) を調整できず、そしておそらく個人的には合っていないからか、中央部は大丈夫なのですが周辺部に表示された文字などはぼやけてしまう範囲が大きいように感じます。ただこれは焦点距離が合っている合っていないの個人差があるのかと思います。

一方 HTC Vive Pro は、焦点間距離を簡単に測って調整できるので(ダイヤルを回すとミリ単位で表示され調整できる)、調整後は中心部だけでなく周辺部まで比較的くっきり見えています。

GPU スペックがそこまで余裕がない場合 (GeForce GTX 1070)

GTX 1070 程度のスペックの場合、普通に VR はプレイできますが、SuperSampling (内部解像度)をあまり上げる余裕はありません。なので以下の同程度のレンダリング設定で比較しました。

  • Oculus Go + ALVR:片目 1792×2016 (両目 3584×2016) (SS=200%)
  • HTC Vive Pro:片目 1803×2004 (両目 3606×2004) (SS=80%)

また ALVR の設定として、解像度 3072×1536 を H.265 HEVC 圧縮し、転送ビットレート 70 Mbps を使用しました。

ヘッドセットのスペック上の解像度は Oculus Go が 2560×1440、HTC Vive Pro が 2880×1600 と後者が勝っていますが、上記の設定での比較では、正直あまり違いは感じませんでした。よく見ると HTC Vive Pro の方が気持ち程度キレイかとは思いますが、値段の差ほど劇的に違いはなかったです。

ただ、Oculus Go + ALVR を使った場合、仕様上映像を H.265 HEVC で圧縮して WiFi 経由で転送しているので、映像圧縮による劣化・ぼやけた感じが気になる場面がありました。目立ち方は場面によって異なるのですが、例えば草原など草が多く生えているフィールドなどではぼやけた感じが気になりがちで(細かい草が圧縮されボヤッとした緑の塊に見えてしまう)、一方街の中などではあまり気になりませんでした。

ALVR の転送ビットレートを100Mbpsぐらいまで上げれば画質は多少改善します。ただそれでも映像圧縮による劣化は完全には消えず、また遅延が大きくなってしまい、より VR 酔いしやすくなってしまうようにも感じたので、自分は 70Mbps ともう少しビットレートを落として使っていました。とはいえ、6倍もの値段の差を考えれば Oculus Go は大健闘しているとも言えます。

GPU スペックが高い場合

先ほどは HTC Vive Pro でもあまり違いが感じられなかったと述べましたが、正直上記の設定では GPU がボトルネックになっていて、Vive Pro の機能をフルに発揮できていないようにも感じました。

以前にSuperSampling (内部解像度) は最低でも縦横x1.4倍、理想はそれ以上上げるべきだと書きました。なのでフレームレートを度外視して、HTC Vive Pro の解像度 x2.0 倍相当となる

  • Oculus Go + ALVR:片目 3072×3072 (両目 6144×3072) (SS=400%)
  • HTC Vive Pro:片目 2880×3200 (両目 5760×3200) (SS=204%)

で比較してみました。

Oculus Go + ALVR の方は、残念ながらこれだけ SuperSamplingを上げても先ほどに比べてあまり改善は見られませんでした。おそらく、映像圧縮・転送による解像度がボトルネックになっているためだと思われます。

一方 HTC Vive Pro の方は・・・ ものすごく鮮明な映像になりました!

以前から VR 版は FullHD の通常プレイに対して鮮明感に欠けると思っていて、それは現在の VR スペックではどうしようもないと勝手に諦めていたのですが、それはウソだったようです。Vive Pro でここまで内部解像度を上げると世界が全く変わって見えて、例えば街で人々とすれ違っても彼らの顔のしわまでくっきり見えてしまいます。Skyrim VR のキャラクターたちがそこまで細かく描画されているとは今まで気づきませんでした。

Vilkas Object

例:スクリーンショットにしてしまうと少し分りづらいのですが、上図で Vilkas (左の人) の鎧の首のあたりに獣の形のオブジェが付いています。昔はそんなこと全然気づいていなかったのですが、Vive Pro で内部解像度を上げると、会話している時に目について気になってしまうぐらいクッキリと分かりました。(これが VR だと立体的にクッキリ見えているので)


Vilkas Object Zoom

上記のスーパーサンプリング設定は、両目で 5760×3200 (18.4M) ピクセルと、4K (3840×2160 = 8.3M ピクセル) に比べても2倍以上に相当し、現実的に運用できる GPU を持っている人は多くないかもしれません。ただ Motion Smoothing を併用して1フレーム22ミリ秒かかってもいいので、稼働できる人は是非試してみる価値はあると思います。VR クオリティが大きく改善します。

この GPU 高スペックケースでは HTC Vive Pro が Oculus Go + ALVR に圧勝していると言えます。

ケーブルレス:Oculus Go + ALVR の勝ち

Vive Pro はヘッドセットからのケーブルが一本にまとまっており、またケーブルも比較的しなやかなため、多少動いていても思ったより気になりませんでした。とは言え、ゲーム中にだんだん回転が蓄積していくとケーブルが絡まってくるので、たまに意識的に逆回転をして絡みを戻す必要がありゲームから現実の世界に引き戻されます。

一方、Oculus Go + ALVR + ワイヤレス XBox コントローラの組み合わせでは、すべてがケーブルレスなので非常に快適です。ゲーム中街の中やダンジョンでグルグル歩き回っていてもケーブルが絡まってくることもありません。

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操作性:Vive Pro の勝ち(もしくは引き分け)

VR コントローラで操作した方が没入感が高まるので、そういう意味では Vive でプレイした方が圧倒的に優れているのかもしれません。特に部屋が広くスペースが取れ、Vive のルームスケールでプレイしている人は、Vive の圧勝でしょう。

ただ、こちらの環境ではそこまで広いスペースは取れず、思い切って剣のつもりでコントローラを振り回していると PC や家具などに被害が出かねないので、基本的には XBox コントローラで操作しています・・・。ゲームパッドの方が慣れていて操作も早いですし。そういう意味では Oculus Go + ALVR でも Vive Pro でも同じ操作方法になってしまっているので、引き分けです。

結論

Oculus Go + ALVR に比べて Vive Pro の方が確かにクオリティーは高いですが、GPU性能が GTX 1070 程度の場合は Vive Pro の高解像度をフルに享受できないようで、値段の差ほど違いは大きくはないように感じました。

むしろ値段の差が約5倍もあることを考えると、Skyrim VR をプレイしている限りは Oculus Go + ALVR は大善戦しているようにも感じます。なにより、ケーブルに煩わされることなしで自由にワイヤレスでプレイできるのはとても快適です。

とはいえ、Skyrim VR というゲームがたまたまコントローラー入力を完璧にサポートしているので例外的にうまくいっている例とも言えます。一般的なVRゲームではコントローラー入力はサポートされていないケースが多いので、Oculus Go + ALVR の組み合わせでは満足に動作しないことが多々あります。

来年 Oculus Go の後継機 Oculus Quest が発売されることがアナウンスされています。 詳細はまだ分かりませんが、仮に 6DoF に対応し両手コントローラーもサポートされ、そして ALVR もそれらに対応すれば、これらの欠点は無くなります。さらに解像度も上がり装着感も改善されれば Vive Pro との差はさらに縮まります。

いずれ、無線LANの規格がさらに高速化され映像圧縮による遅延と劣化が軽減されることがあれば、ケーブルレスのデメリットがなくなりメリットが際立つことになるので、Vive Pro や Windows Mixed Reality などの PC 接続のデバイスを凌駕していく可能性は十分にありえると思います。

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