Meta Quest3 が 2023年10月に発売されました。前機種 Quest2 に比べて順調にスペックが向上しており、もちろんスタンドアロンの VR 機器としても良いデバイスなのですが、PC VR (Steam VR など) を無線(ワイヤレス)でプレイする用途でもかなりパワーアップしました。
とはいえ、最も安いモデルでも 74800円とだいぶ値段が高くなり、気軽に買える価格ではなくなってしまいました。
Quest 3 を何週間か使い込み、他の VR 機器と比較してどうなのか、またこれだけの値段を出す価値があるのかどうかを調べてみました。
他のデバイスとのスペック比較
この記事では、旧機種の Quest2、有線接続の PC VR 機器 HP Reverb G2、また参考のため PS VR2 とも比較してみました。
まずはスペックの違いです。
Quest3 | Quest2 | HP Reverb G2 | PS VR2 | |
---|---|---|---|---|
ディスプレイ | LCD (液晶) | LCD (液晶) | LCD (液晶) | 有機EL |
解像度(片目) | 2064×2208 | 1832×1920 | 2160×2160 | 2000×2040 |
最大リフレッシュ レート |
120Hz | 120Hz | 90Hz | 120Hz |
視野角 | 110度 | 90度 | 最大114度 | 110度 |
IPD 調整機能 | 調整可能 | 調整可能 | 調整可能 | 調整可能 |
重量 | 515g | 503g | 600g | 540g |
接続方法 | Wifi 6E | Wifi 6 | 有線接続 | 有線接続 |
発売当初の値段 | 74,800円 (128GB) | 37,180円 (64GB) | 65,780円 | 74,800円 |
まず、Quest 2, 3 ではスタンドアロンでそのデバイスだけで使えるのに対し、
- HP Reverb G2 では別途ゲーミングPCに
- PS VR2 では別途 PlayStation 5 (PS5) に
有線で接続して利用する必要があるという違いがあります。
なので、ゲーミングPC や PS5 を持っていないけど VR ゲームをプレイしてみたいという場合は、単体で利用できる Quest 2 もしくは 3 を購入するのが一番安上がりになります。
また、それぞれのゲームストア(Meta Quest Store, PC VR (Steam VR Store, Oculus Store), PlayStation Store)によってプレイできるタイトルにも違いがあります。
ただ、以下ではそれら接続方法の違い以外の、純粋にVRヘッドセットのスペック・使用感の違いに注目することにします。
Quest 3 を開封
Quest 3 の箱は Quest 2 よりも一回り小さくなりました。
箱の中を見てみても、ヘッドセットが薄くなってコンパクトになっていることが分かります。
また、コントローラも大きな輪っか(リング)がなくなりコンパクトになりました。
ファーストインプレッション
Quest 3 を使用してみての第一印象としては、レンズがとても優秀だと感じました。
ヘッドセットが薄くなったにもかかわらず、視野角は広くなり、焦点が合いくっきり見える範囲が格段に広がり、画面全体がぼやけずにくっきり見えることに驚きました。
今までのヘッドセット、例えば Quest2 やHP Reverb G2 を使用する際には、ヘッドセットを装着した後に、できるだけ焦点が合う範囲を最大化するために位置を微調整するのが個人的には必須となっていたのですが、Quest3 では雑に装着してもそれだけで画面全体で焦点が合っている感じです。
もちろん焦点の合い方は人によって個人差はあるとは思うのですが、画面全体で焦点が合うVRヘッドセットは自分にとっては初めてでしたので、個人的にはこの点だけでも買って良かったと思いました。それを体験したあと Quest2 や HP Reverb G2 を使ってみたところ、画面中心部以外の焦点がボヤけた感じが気になってしまい、もう戻れないと感じてしまいました。
焦点が合いクッキリ見える範囲(あくまで筆者による個人的な感想です)
Quest 3 >> PS VR 2 > Quest 2 > HP Reverb G2
視野角(あくまで筆者による個人的な感想です)
Quest 3 = PS VR 2 > Quest 2 > HP Reverb G2
画面の解像度も、Quest2 に比べてさらに上がっており、文字などもより滑らかに読みやすくなっています。
Quest3 | Quest2 | HP Reverb G2 | PS VR2 | |
---|---|---|---|---|
片目解像度 | 2064×2208 | 1832×1920 | 2160×2160 | 2000×2040 |
ただこのレベルになると、解像度の違いは正直そこまで大きくは感じないように思いました。
それよりも、体感としては焦点の合う範囲や視野角の広さの方が重要かなと感じ、Quest3はまさにそれらで顕著に改善されているので大満足でした。
スタンドアロン機器としての魅力
Meta Quest 3 では、Quest Store に蓄積された多くのVRゲームが比較的手ごろな値段で楽しめます。
最近では「Assassin Creed Nexus VR」といった Quest 専用の大作VRゲームも発売され、プレイできるゲームの数などVRプラットフォームとして勢いがあり安心できます。
Assassin Creed Nexus VR の序盤をプレイしてみた所、やはりテクスチャなど画像のクオリティとしてはどうしても PC VR や PS VR2 と比較すれば劣ってしまうのは事実としてありますが(ハードウエアの GPU 性能・電力消費・値段に圧倒的な差があるので)、ゲームに熱中してしまえばそれほど気になるレベルではありません。
それよりも、デバイス単体で手軽にプレイできるのは万人向けの魅力だと思います。どうしても画質にこだわりたい人は、ゲーミングPCにつなげて PC VR をプレイすれば解決します(後述)。
MR (Mixed Reality) としての魅力
Quest 3 では、外部カメラにより、ヘッドセットを付けた状態でも外部の映像をカラーで見ることができます(パススルーと呼ばれています)。その外部(現実)の映像と、Virtual な映像を組み合わせた、MR (Mixed Reality) のコンテンツもプレイ可能です。
例えば、Quest 3 を買うと無料でインストールされている「First Encounters」では、実際の部屋の壁や床を壊しながら敵を倒していくことができ、MR を使ったゲームはこんなことができるのかと新鮮な体験ができます。
またゲームだけでなく、例えば「Immersed」という有料アプリを使ってPCと接続すれば、PC の複数のPC外部ディスプレイとして利用することもできます。
そんなこと実用的に使えるのかと不安でしたが、ヘッドセットの解像度が高いのでヴァーチャルなディスプレイでも十分に文字が読め、またパススルーでも現実世界がある程度の精度で見えるので、キーボードのブラインドタッチができる人であれば十分に実用可能なレベルだと感じました。
こういった MR 体験は新しく新鮮で、家族や友人に試してもらうのにも面白いのですが、何日間も継続してプレイしたいかというと微妙で、正直言ってこれだけでヘッドセットの値段の元を取るのは難しいと感じました。
PC VR 機器としての魅力
Quest 3(および Quest 2)では、ゲーミングPCと接続することで Steam VR や Oculus VR といった PC VR のゲームをプレイすることもできます。
しかも、Quest 3 では以下のようにハードウェア性能も強化されたため、高速WiFiで接続して画質の劣化がほぼなくワイヤレスでプレイすることも可能となっています。
- WiFi 6E サポートによる 6GHz 帯での高速通信
- デコーダ機能向上による、AV1 デコーディング対応、また H.264 超高ビットレートデコーディング対応
これらの強化により、Quest 3 は PC VR をプレイする環境として現時点で最強になったのではと思いました。
今までの VR ヘッドセットでは、例えば Skyrim VR をプレイしても、焦点の合う範囲が狭くメニュー画面の半分程度がぼやけてしまったり、またワイヤレスストリーミングのデータ圧縮による画質劣化が気になってしまうと、いうことが多々あったのですが、Quest 3 でワイヤレス PC VR を使うようになってからはそれらが全く気にならなくなりました。
(接続方法としては、Steam Link, Meta Quest Air Link, Virtual Desktop, ALVR などがあるのですが、それらの違いは後日記事にまとめる予定です)
結論
Quest3 は、画面の解像度や焦点が合う範囲などといった基本的性能が上がっており、値段も上がっていますが魅力的な機器となっています。
スタンドアロンのVR機器としても優れていますが、無線LANや映像のデコーディング性能も上がっているため(AV1や超高ビットレート対応)、高スペックのPCを持っているのであれば超高画質のワイヤレス PC VR 環境を目指すことが可能です。
Steam Link や Virtual Desktop を使えば、簡単にワイヤレスPC VR環境を構築することができますし、特に超高画質を目指すなら Meta Quest Air Link で最大 850Mbps ぐらいまでビットレートを上げてもはや圧縮転送されているというのが分からないほど高画質とすることも可能です。(ただし、設定が玄人向けで、要求されるPCスペックやネットワーク環境もハードルが高いという欠点があり、詳細はいつか別の記事にまとめたいと思います)
と言うわけで、Quest 3 は個人的には久々の大ヒットで、PC VR をワイヤレスでエンジョイしております。
ただ、Quest 3 に付属してくるデフォルトのストラップは、お世辞にも良いとは言えず、長時間利用した時の快適さを考えると、別途他のストラップを購入し取り替えた方が良いと感じました。
また、PC VRをワイヤレスでプレイしたいのであれば、バッテリーの減りが激しいので、バッテリーを内蔵しているストラップに変えた方が幸せになれると思います。ちなみにMeta純正品は高いので、自分は以下のAmazonで安かった製品を購入しましたが、それで十分でした。