長らく待った、HTC VIVE Pro 2 が発売され、ようやく入手することができました!
スペックと前評判的には、最強の PC VR 環境になりそうだと楽しみにしていたのですが、実際はどうなのでしょうか?
実際に使用してみた感想と、HP Reverb G2 との比較結果も記録しておきたいと思います。
VIVE Pro 2 開封の儀
ヘッドマウントディスプレイのみを購入した場合、外箱のなかにコンパクトな箱が2つ入っていました。
箱を開けると、ヘッドセットやアダプタ・ケーブル類がこんな感じで入っていました。
梱包を取ると、いよいよヘッドセットにご対面です。
PC へのセットアップ
PC へセットアップするためには、まず VivePro2Setup というソフトウェアをダウンロードする必要があります。
その後はそのソフトウェアの指示に従って、ドライバ更新、ケーブル接続、キャリブレーションなどをしていけば終わります。
VIVE や VIVE Pro をすでに使っておりベースステーションをすでに設置してある環境でしたら、そんなに時間はかからずセットアップできます。
ベースステーションの設置も必要な場合は、 VIVE Pro 導入のページ も参考にどうぞ。
VIVE Pro 2 のスペック
HTC VIVE Pro は、2018年に発売された当初は「プロ」の名前にふさわしいスペックでしたが、だいぶ月日が経った今となっては、Valve Index や HP Reverb G2 など新しい機種に比べて見劣りしていたのは否めません。
それらに近年発売された機種に比べても、新発売された HTC VIVE Pro 2 は特に解像度が大幅に強化されました。
HTC VIVE Pro | HTC VIVE Pro 2 | Valve Index | HP Reverb G2 | |
---|---|---|---|---|
ディスプレイ | OLED (有機EL) | LCD (液晶) | LCD (液晶) | LCD (液晶) |
解像度(片目) | 1440×1600 | 2448×2448 | 1440×1600 | 2160×2160 |
リフレッシュ レート |
90Hz | 90/120Hz | 80/90/120/144Hz | 90Hz |
視野角 | 110度 | 120度 | 130度 | 114度 |
IPD 調整機能 | 調整可能 | 調整可能 | 調整可能 | 調整可能 |
重量 | 765g | 830g | 809g | 600g |
ベースステーション | 必要 | 必要 | 必要 | 不要 |
値段 | – | 103,400円(HMDのみ) 154,418円(セット) |
69,080円(HMDのみ) 138,380円(セット) |
65,780円 (すべて込み) |
(スペック上優れているところを赤でハイライトしています)
HTC VIVE Pro 2 の特徴としては、
- 画面の解像度が片目あたり 2448×2448 ピクセル(両目で 4896×2448)と、旧機種や競合機種に比べても一段と高い(5K解像度)
- リフレッシュレートや視野角も旧機種よりも改善された
- ただし、ディスプレイが OLED (有機EL) から液晶パネルに変更された
- お値段も一番高め。ただし、ベースステーションやコントローラーなどは VIVE 旧機種を持っていれば使い回すことができる
などという点が上げられます。
VIVE Pro 2 を HP Reverb G2 と比べてみる
自分の場合、PC VR は画質・解像度を重視しています。
なので、ここからは、画面の解像度のスペック的に最も近い HP Reverb G2 と、実際に交互に使用して比較してみた感想です。
ヘッドマウントディスプレイの装着感
まずはヘッドマウントディスプレイの装着感ですが、VIVE Pro 2 はもともと快適だった旧機種 VIVE Pro とほとんど同じようで、十分に快適です。
HP Reverb G2 と比べると、VIVE Pro 2 の方が 200g 以上重いのですが、重さがうまく前後にバランスされているので、個人的には甲乙付けがたく、どちらも長時間快適に利用できました。
また、VIVE Pro 2 ではヘッドセットと鼻の上の空間があまり空かないようなデザインになっているようです。メリットとしては、外部の光が入り込みづらく、より没入感が出ることがあげられます。デメリットとしては、少しレンズが曇りやすいように感じました。
サウンド
サウンドに関しても、一長一短かなと思います。
- VIVE Pro 2 ではヘッドセットが耳に接触しているので、音漏れが少ないというメリットがあります。
- 一方、空間の広がり具合の表現や、低音のサウンドの聞こえ方は、HP Reverb G2 の方が優れていると感じました。
視野角の広さ
HP Reverb G2 では、視野角はそれほど広いとは言えず、パッと見た目はゴーグルをかけているかのように、見える範囲が丸く限られているように感じてしまいます。
一方、VIVE Pro 2 では、スペック上視野角 120 度と改善されており、旧VIVE Pro や HP Reverb G2 よりも目の前に広く映像が広がります。
ただし、広く見えていても、左右の周辺部はボヤッとしており、文字などは読めませんでした。
例えば、Skyrim VR のメニュー画面などで試してみましたが、焦点がハッキリ合って文字が読める範囲と言う意味では、VIVE Pro 2 も HP Reverb G2 もあまり変わらないように感じました。
ただし、見える範囲や焦点の合いやすさは、IPD (左右の目の焦点距離)の違いにより違う可能性があり、これはあくまで自分の場合の感想です。
(ちなみに自分の IPD はかなり広く、最大まで左右のパネル位置を広げて使っています)
画面の解像度・鮮明さについて
さて、肝心の画面の解像度・鮮明さについての比較ですが・・・
VIVE Pro 2 の第一印象は、正直、あれっ?という感じでした。
比較対象として HP Reverb G2 を使っていたので、さらにそれを超えるかもと期待値が高すぎたのかもしれませんが、何となく、VIVE Pro 2 の方が LED パネルの解像度は高いはずなのに、画面の鮮明感が少ないような感じがしたのです・・・。
???
スペック上では、VIVE Pro 2 の液晶パネルの方が優れているはずです。
- HTC VIVE Pro 2 が片目 2448×2448 (両目 4896×2448)
- HP Reverb G2 が片目 2160×2160 (両目 4320×2160)
もっと調べるため、描画の条件を同じにし、どちらも片目3000×3000(両目6000×3000)程度の解像度になるように Super Sampling で設定して比べてみました。
その後、Half-Life Alyx や Skyrim VR などいくつかのタイトルで試してみましたが、どれも VIVE Pro 2 の画面の鮮明さがイマイチ HP Reverb G2 に劣っているように感じました。
例えば、HP Reverb G2 では Skyrim 迷宮内の立体的な構造がクッキリ見えたところが、VIVE Pro 2 では(ほんの少しだけですが)ボヤッとしているような・・・。
ただの推測ですが、これは VIVE Pro 2 では、映像の伝搬に Display Port の DSC (Display Stream Compression)圧縮方式を使っているため、シャープさが失われてしまっているのかなと思ってしまいました。
というわけで、自分が見た限りでは、画面のシャープさ、鮮明さは HP Reverb G2 の方が勝っているように感じました。
とはいえ、二つのデバイスを行き来して見比べているから気になった程度で、決して VIVE Pro 2 の鮮明感が悪いわけではありません。言い方を変えれば、ピクセルのジャギーが見えずむしろ AntiAliasing がより強力にかかっているようだとも言えるので、個人的な好み程度の問題かもしれません。
少なくても、旧機種 Vive Pro に比べたら比較にならないほど圧倒的に解像度が改善されています。
コントローラー
VIVE Pro 2 のコントローラーは、旧 VIVE 機種と同じなので、まぁちょっと古くさい感はあります。アップグレードしたい場合は、Valve Index コントローラーを別途購入して使うこともできます。
どちらにしろ、ベースステーションを使うだけあってトラッキングの性能は抜群に安定しています。
一方、HP Reverb G2 のコントローラーは・・・カメラでトラッキングする方式なので、少しトラッキングの精度が劣るようです。自分はあまり激しいアクションゲームや高得点狙いのシビアな動作などは要求していないので特に問題は無いですが、そういう用途で使いたい場合は向いていないかもしれません。(ただ自分が使っている範囲では特に問題は感じないですが)
また、Windows Mixed Reality コントローラーなので、例えばゲーム内のチュートリアルでの操作方法の説明などがそのまま当てはまらないケースも多く、ゲームによっては自分でコントローラーのバインディングを調整する必要があったりするのは、ちょっと敷居が高いと感じるかもしれません。
結論
結論から言うと、VIVE Pro 2 が現時点で最強の PC VR 環境だとは必ずしも言えないようです。
正直、VIVE Pro 2 が届いたら HP Reverb G2 は売却してしまおうかと思っていたのですが、現状では優劣付けがたいのでそれは思いとどまっています。
当面の間は、用途に応じて使い分けていこうかと思っています。
いずれソフトウェアが更新されれば、また状況は変わるかもしれません。例えば、VIVE Pro 2 で、解像度とリフレッシュレートを多少制限してでも DisplayPort DSC 圧縮をかけずに転送できるようなオプションが追加されれば、鮮明さも逆転できるかもしれません。
追記
しばらく使ってみた結果、結局、以下のように用途によって VIVE Pro 2 と HP Reverb G2 を併用するので落ち着ついています。
- Skyrim VR や Half Life: Alyx など、画質の鮮明さや3D構造物の立体感を重視してプレイしたい場合は HP Reverb G2
- ビデオなどの映像コンテンツや、ゲームでも視野角や没入感をより重視してプレイしたい場合は HTC VIVE Pro 2
とはいえ、それほど大きな差はないので、逆の組み合わせで利用してもぶっちゃけあまり問題はないのですが・・・。
最後に・・・パフォーマンスに関しての謎現象(→ 直りました)
当方の環境だけかもしれませんが、なぜか同じような SuperSampling 設定で描画させた場合、
VIVE Pro 2 の方が1フレームの速度が遅い(FPSが下がる)- HP Reverb G2 の方が GPU VRAM の使用量が多い
という現象に見舞われています。具体的には、Ryzen5900X + RTX3090 の環境で 2900×2900 程度の SuperSampling で Skyrim VR をプレイした場合
VIVE Pro 2 では 90 FPS ではコマ落ちが発生し(60FPSでは安定)、VRAM 使用量は 8GB 程度- HP Reverb G2 では 90 FPS で安定運用可能, VRAM 使用量 10GB 程度
となっていました。
後者の GRAM 使用量の差は、おそらく HP Reverb G2 では Steam VR に加えて Windows Mixed Reality も立ち上がるため、それに 1~2GB ぐらい余分に取られているのだと思われます。RTX3090 だと全然問題にならないですが、RTX3080 や RTX 3070 など VRAM が 8~10GB 程度のグラボを使っている場合、シビアな差となって現れるかもしれません。
一方、前者のフレームレートに関しては、なぜ同じ描画解像度でフレームレートに差が出ているのか、全く見当も付きません。Steam VR の設定に加えて、VIVE Console というソフトウェアからも設定をいろいろ変更してみたのですが、今のところ解決していません。
追記:ソフトウェアの更新後は、フレームレートが遅くなる現象は直ったようです。なのでフレームレートに関しては、同じような描画解像度を使用すれば VIVE Pro 2 でも HP Reverb G2 でもほとんど違いはなくなりました。